夢幻樹
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卒塔婆(そとば) エピローグ
2014-04-15-Tue  CATEGORY: 卒塔婆(そとば)
 ホラー劇場第七回 最終話


 あれから一年が過ぎて、僕は中学校を卒業した。

 高校に入る前の春休みに、重之は突然の心臓発作で亡くなったと知らせを受けた。

 あの時、確かに、卒塔婆を元にあった場所に返したと思っていた。

 けれど、住職に問い合わせたら、なんと、一つ横の墓と間違えて供えてしまったらしい。

 住職は、直ぐにそれを元の墓に戻し、再び経をあげたという。

 あの卒塔婆は、若くして亡くなった女性を供養するためにあったのだと、住職が話してくれた。

 裕司(ゆうじ)と修(しゅう)を襲った、あの声の持ち主である女性が、どんな姿をしていたのか、結局、僕らは解らずじまいだった。

 重之が亡くなったのは、呪いの所為なのか、ただの偶然なのか、僕にはわからない。

 ただ一つだけ言えることは、重之に対しては、あの一件依頼、友達と呼べる存在になったということだ。

 僕をいじめて亡くなった、裕司と修に関しては涙を流せなかったけれど、重之の時は、通夜にも葬儀にも出て、彼の骨を拾い、心の底から悲しんだ。

 彼が亡くなって喜んだ奴は一人もいないだろう。

 呪いというものが、本当に消え失せたのならば……。

卒塔婆2


 -了-

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卒塔婆(そとば) 重之の場合2
2014-04-15-Tue  CATEGORY: 卒塔婆(そとば)
 ホラー劇場 第六回

卒塔婆1

 やがて墓場の敷地内にある寺院の中へ入ると、奥から住職がやって来た。

「いらっしゃい。お参りに来たのかね?」

 住職は優しそうなおじさんで、年齢は俺の親父と同じくらいだろうか。
 毛がふさふさしていて、ツルッパゲになっていない住職に、やや親近感を覚えた。

「実は……」

 セミは率先して、事の成り行きを住職に話した。

「なんという罰当たりな! それは、祟られて当然ですよ」

 住職は悲鳴に似た声をあげた。

「すみません。反省しています。なんとかなりませんか? このままじゃ……俺は呪いで殺されちまう!」

 俺は泣き出したいのを堪えて叫んだ。

「僕からも、お願いします。このままじゃ、僕も殺人犯になってしまいます」

 セミも必死で訴えた。
 住職は、わかりましたと肯くと、「そこに正座しなさい。ちゃんとお祓いをするから」
 と、俺たちを畳の上に座らせた。
 俺とセミは住職があげる読経に耳を傾けた。

「これで大丈夫。卒塔婆は、新しいものを作るから、君達が供えなさい」

 住職は筆で板に文字を書き込むと、半紙に包んで、俺に手渡した。
 俺は直ぐに住職の言われた通り、卒塔婆があったと思われる墓へ供えた。

「ふふっ。これで安心だね」

 セミがくすくすと笑った。

「ありがとうな」

 俺は安堵の息を吐き、セミに礼を言うと、彼と共に墓を後にした。


 エピローグへ続く

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卒塔婆(そとば) 重之の場合
2014-04-15-Tue  CATEGORY: 卒塔婆(そとば)
 ホラー劇場 第五回

 俺はセミと一緒に墓場に向かった。

 セミというのは、あいつの名前じゃなく愛称だ。

 いや、愛称と言っていいのかどうかわからない。

 何せ、ちょっかいをかけると、直ぐにミンミンと泣くからセミと名付けたわけで、その呼び名に親しみがあったのは俺と裕司と修の三人だけだったのだから。

 俺とセミは、例の暴行を起こしたと思わしき場所に辿り着いた。

 たくさんの墓石が立ち並んでいる。周りに人は見当たらない。

「たしか、この辺だったよね?」

 俺には、ここが本当に、あの時の場所だったのかどうか思い出せない。

 墓はどれも同じに見える。

 俺が返事に困っていると、セミが確信したように一人で肯いた。

「確かに、ここだった。ほら、これを見て。僕が鼻血を出した痕が残ってる」

 セミが地面にこびりついている黒い染みを指した。

「うわー。マジかよ。俺達、お前にめちゃくちゃ酷いことをしてたんだな……」

 俺は気持ちが悪くなって、吐きそうになるのを抑えながら、首を横に振った。

「あれ……? 卒塔婆(そとば)が無い」

 セミは墓を見渡しながら残念そうな声をあげた。

「なあ、卒塔婆ってなんだよ?」

 俺は聞きなれない言葉に首を傾げた。

「ほら、重之(しげゆき)くん達が振り回していた板のことだよ。あれは、お供え用の大事な板なんだよ」

 知らなかった。

 あの板は殴るのに調度いいから振り回していただけで……。

 俺達は、とんでもないことをしていたのだと、改めて痛感した。

「卒塔婆ってやつが無いのなら、どうやって元に戻せばいいんだ」

 そんなことをセミに訊ねても仕方ない。

 わかっているのに、俺は問いかけていた。

 なんでもいいから、今は何かにすがりつかなければ、この恐怖心は払拭できないと思ったからだ。

「和尚さんに聞いてみよう。なんとかしてくれるかも知れない」

 俺は、やけに協力的なセミの発言に驚いた。

「お前、どうして俺にそこまでしてくれるんだ?」

 問いかけるとセミは、薄ら笑いを浮かべた。

「だって、僕をいじめた奴等が全員死んでしまったら、僕が殺人犯と疑われちゃうじゃないか。……そんなの……いやだよ」


 次回へ続く


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卒塔婆(そとば) 僕の場合2
2014-04-15-Tue  CATEGORY: 卒塔婆(そとば)
 ホラー劇場 第四回


 僕は渋々と音声を再生した。

「今、変な女に追いかけられて……、た、助けてくれ! 俺は何を戻せば……」

 これは修の声だ。僕が聞いていると、ザザーと電波が入った。

「元に戻せ……」

 これは女性の声だろうか。

 プツン。そこで電話が途切れた。

「おい、何を聞いた? 女の声が入っていなかったか?」

 重之が青ざめた顔で僕に問う。

「お前、心当たりが無いか? 俺達が恨まれるような……心当たりが」

 僕は面倒事に巻き込まれるのはゴメンなので、適当な返事をした。

「女の人をいじめたことがあるんじゃないの?」

 すると、重之は首を横に振った。

「俺達は、女に手をあげたことは一度も無い。それに、酷いことをしたのは、お前に対してだけだ」

 重之はグシャグシャと髪をかきむしり、乱暴に椅子へ腰かけた。

「それに、元に戻せと言われても、俺達は物を盗んだことは一度もない」

 重之はきっぱりと言い切った。

「じゃあ、物を壊したことは?」

 僕が訊ねると、重之はハッとしたように顔をあげた。

「そういえば……。俺達、最近、お前を墓に呼び出して、そこに備えてあった板でお前を殴ったよな……」

 そういえば、そんなこともあったな。

 あの時は本当に怖かった。夜の墓場に呼び出されたのも不気味だったし、無限に続くかと思われた暴行も恐ろしかった。

今、思い出しただけでも身震いがする。

 僕が何も言わずに黙っていると、重之は顔を机に突っ伏した。

「ヤベェ……。次に殺されるのは、俺の番かも知れねぇ」

 きっと僕は、重之がいなくなっても、辛いとか悲しいとか感じないだろう。

 だけど、ここで何もしないで、ただ重之が殺されるのを待つなんて、それでは鬼畜以外の何者でもない。

 僕は虫けら扱いをされたけれど、魂まで外道になるつもりはない。

 面倒事はごめんだけど、今、彼を放っておいた方が、後々が面倒な気がしてならない。

「あのさ……。もう僕をいじめないと約束してくれるなら、一緒に墓に行ってもいいけど……」

「えっ? なんだって?」

「だから、僕が一緒に墓に行ってもいいよ、って言っているんだ。一人じゃ、怖いだろうから」

「べ、別に怖くは無いけど、お前が一緒に行ってくれるのは、ちょっとありがたいかも知れないな」

 重之は気恥かしそうに、頭を掻きながら肯いた。


 次回へ続く

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卒塔婆(そとば) 僕の場合
2014-04-15-Tue  CATEGORY: 卒塔婆(そとば)
 ホラー劇場 第三回


 裕司(ゆうじ)が亡くなった二日後に、全校集会が開かれた。

 校長は額に汗を浮かべてハンカチで拭っていた。

「訃報(ふほう)をお伝えします。昨夜、成田修(なりた・しゅう)君が亡くなりました」

 ざわざわ。生徒達がどよめいた。

 僕は、心の底から笑みを浮かべていた。

 何故かはわからない。けれど、僕をいじめた奴等がことごとく亡くなっている。こんなに痛快なことがあるだろうか。

 別に、僕が彼等の死を望んでいたわけじゃない。

 けれど、天罰は下ったのだ。



 教室に戻ると、重之(しげゆき)が青ざめた顔で僕を見た。

「おい。お前、俺達を呪っただろ!」

 いつもは僕が怯えさせられている側だが、この時は、まるで立場が逆転していた。

「別に呪っていない。ただ、天罰が下っただけだと思う」

「修の死体。裕司の時と同じように、首と胴体が切断された状態で見つかったんだと。あいつのおふくろさんが話してた」

「えっ? く、首が切断!?」

「あれは、人間の仕業なんかじゃない。それに、こいつが何よりの証拠だ」

 僕が目を見開くと、重之は携帯を投げつけてきた。

 ゴチッ。

僕は急な出来事に対応できず、投げられた携帯が肘に当たった。

「その携帯で、一四一六にかけてみろ」

「なんで?」

「いいから、かけろ!」

 重之に怒鳴られた僕は、嫌々ながらも一四一六に電話をかけた。

「こちら留守番電話サービスです。現在、お預かりしているメッセージは一件。再生する場合は一を……」

「留守番電話サービスだって」

 僕が切ろうとすると、重之は怒鳴りつけてきた。

「再生しろ!」

 僕は渋々と音声を再生した。

「今、変な女に追いかけられて……、た、助けてくれ! 俺は何を戻せば……」

 これは修の声だ。僕が聞いていると、ザザーと電波が入った。


 次回へ続く


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